中村 貞雄
青山学院横浜英和小学校の2024年度が始まります。66名のピカピカの1年生を迎え、子ども達も、教職員も、そして保護者の皆様も希望に満ちた新しい年のスタートです。今年度も横浜英和小学校の教育活動にご理解、ご協力、お支えをよろしくお願いします。
先日、家族の誕生日祝いにあるレストランに食事に行きました。注文のためメニュー表を見ていましたが、その中に「シェフのおまかせコース」と書かれていました。何のどんな料理が出てくるのか、ミステリアスのところもあり注文することにしました。この「おまかせ」という注文の仕方ですが、「回っていない」お寿司屋さんでよく採用されていたり、寿司店だけでなくても、和洋中どの料理店にも最近よく見かける注文の仕方です。いちいち何をどの順番で注文するか、自分で決めなくてもよい。「こんなものを頼んだら、笑われるかもしれない」などとびくつかずにすみます。つまり「自分で決める」からの解放かもしれません。
考えてみると、外食に限らず、私たちの暮らしのいろいろな場面で「おまかせ」に頼っています。例えば車のナビやスマホの地図アプリでの道案内。特に地理的に詳しくない場所に行く時など、経路の選択はほぼ「おまかせ」です。レポートなどの作成で頼りにする人も増えている生成AI(人工知能)こそ、「おまかせ」の極意でしょう。
しかし、携帯電話を忘れ、公衆電話からいざかけようとしたら、家族や友人の電話番号を覚えていないことに気づく…。電話番号の記憶をスマホに「おまかせ」にするうちに、私たちの記憶は錆びついてしまっているのです。恐れるのは、「おまかせ」に慣れきってしまううちに、感じ、考え、自分で判断するという回路が錆びついているという点なのかもしれません。
2024年度のスタートに当たり、便利な「おまかせ」の世界から少しでも距離を置いて、思考回路が錆びつかないようにしていきたいと思っています。今年度もよろしくお願いします。